断熱材の選定ではその素材の性能、特に断熱に関わる性能が重視されるのは言うまでもありません。
多くの断熱素材が建築業界にはあふれています。
一番多く使われている素材は鉱物系のグラスウールです。
その最大の特徴は、「低価格でそこそこの性能」「施工に対して特別な技術が必要ない」ということも使いやすい理由です。
全国的に普及している素材ですし比較的歴史もあるため職人さんの習熟度も高く、施工に関してリスクの少ない素材であることも使われる所以です。
性能や価格、施工性で選ぶことは合理的な事ですがそれを決定する以前にもう少し勉強してみる価値があるのが断熱材なのです。
なにしろ長い時間、その建物がある限り家族の健康を守り生活を包んでいる素材なのですから、いうなれば第二の衣服のようなものです。
自然素材や鉱物系、プラスティック系など素材の原料の違いを以前コラムで書きましたが今回は「ポリエステルの環境性能」を考えてみたいと思います。
「環境性能」とは、製造エネルギー負荷やリサイクル率、環境負荷などを考えた選択肢です。
ポリエステルは1940年代初頭に木綿の代替え材料路して開発され、現在では衣類に使われる合成繊維の世界では85%ものシェアを持つにいたるそうです。
製品化されてからの歴史も他の石油系素材に比べ長く、衣類に使用されていることからも判るようにアレルギー反応を引き起こす割合は比較的少ないといわれています。
断熱材として使われるポリアステルは、主にペットボトルのリサイクルでつくられています。
リサイクルポリエステル製品は新たに石油からポリエステルをつくりだすのに比べ1/5のエネルギーで済むということで低エネルギーの石油系(プラスティック系)製品です。
しかもウール(羊毛)やウッドファイバー(木の繊維)のような天然繊維と比べ腐敗防虫の心配が無いため防虫剤などの添加もなく、防虫剤による2次的な健康被害の心配がありません。
まあ元々が石油製品なのですから自然素材と比較するのもどうかとは思いますが、ウールやウッドファイバーには防虫と難燃性を持たせるためにホウ酸が使われています。もちろんホウ酸は食品添加物にも使用されるほど安全性は高いといわれていますが全く心配が無いわけではありません。
熱伝導率を比較してみる
(熱伝導率は熱の伝えやすさの数値なので数値が小さい方が性能値が高い)
ポリエステル断熱材 0.035W/mk(ボードタイプ30kg/㎥)
ピュアウール 0.040 W/mk(16.10kg/㎥)
ウッドファイバー 0.038 W/mk(40kg/㎥)
セルロースファイバー 0.040 W/mk(25kg/㎥)
高性能グラスウール 0.038 W/mk(16kg/㎥)
施工費を含めた金額を高い順に並べてみると
ウッドファイバー>ピュアウール>セルロースファイバー>ポリエステル>グラスウール
このほかにも多くの素材があり、その中でもさらに密度などで性能や金額も変わるので単純比較はできないけれど充填断熱を選択し、同等性能を確保するために掛かる金額としては大体以上のようになります。
バインダーについて
ポリエステル素材の断熱材にはいわゆる接着剤は使われていないということです。
同じ繊維系断熱材で鉱物系のグラスウールなどは形状保持のために接着剤(バインダー)で固めてあります。
自然素材系のウッドファイバーなども形状保持のために数パーセント、オレフィン繊維が混入されています。
バインダーという揮発溶剤が無く、ポリエステル素材だけでつくられているので化学物質に敏感な人でもかなり許容できるらしく、病院などでの採用頻度も高いようです。
ポリエステル断熱材は200℃程度の熱で熱融着できるので融着して形状を保持しているということで、接着剤の必要が無くても製品化できるようです。
サンプルを取り寄せてみましたが、手触りはウールに近くチクチクしない。というかウールより繊維が細かく柔らかく肌触りがよい。
ウールは柔らかそうだけれどいかにも動物の毛という感じで意外にごわごわ硬い。
メーカーサイトでは吸音性があり生活音を室外に漏らしません。というコメントもあるりますがこれはあまり期待しないほうがいいでしょう。
吸音防音に関しては比重の重い、セルロースファイバーやウッドファイバーには勝てません。
透湿抵抗はウールとほぼ同じぐらいなので壁内に進入した湿気は外部に通気層さえあれば排出され結露の不安もなさそうに思います。
まだ結露検証はしていないので透湿抵抗値を見たところのイメージですが埼玉県近郊なら防湿シートも省けそうです。
ポリエステル断熱材のまとめ
揮発性のある有害な化学物質を一切含まない石油由来の単一な化学物質で環境負荷の少ないリサイクル製品
油製品のリサイクルか、セルロースやウッドファイバーなどの自然素材の有効利用か、いずれにしろ限られた資源を考えると資源は有効利用しなければならない。
産業を考えれば新しい製品を作り出すことにも意味はあると思うが、リサイクル技術も産業として大きくなる余地はある。
また、石油製品とはいえ衣類にも多く使われるように安定した素材と言われ、化学物質過敏症の方にも使える可能性が高い断熱素材です。
自然素材の断熱材に使われる防虫剤やバインダーとしての化学繊維に反応してしまう素材に敏感な方にも使える可能性がある素材です。
サンプルを依頼してみた。
商品名:パーフェクトバリアー
右側白い方がポリエステル左がウール
弾力性はウールの方がある。
ポリエステルは繊維が細かく柔らかい。