基本に帰りそもそも耐振性とは(軸組み工法)
地震国日本と言われてきましたが台風や大きな風の吹く爆弾低気圧なども建物を大きく揺らします。
軸組み工法は地震力や風に対しては軸組全体で抵抗するのではなく、建物の中に配置された耐力壁により抵抗します。
「柱や梁を太くすれば地震に対して丈夫である」とか「柱の本数を増やせば丈夫である」
というような説明が施工者側からなされることも多いがそれは間違いです。
確かにそのようなこと構造的に意味はあります。
固定荷重(建物の重さ)や積載荷重(人や家具、積雪など)を安定的に支えるには有効な事ですが、耐地震力、耐風圧力に関してはほとんど意味がなく、耐地震力、耐風圧力には梁や柱の太さではなく、耐力壁が全て負担すると言ってもいいくらいです。
「地震や台風に対して強い家とは柱の太さや柱の本数、梁の太さでは無く、耐力壁のず充実から。」と覚えておいてください。
では耐力壁とは何でしょうか。
軸組み工法で代表的に使われ、実績も一番豊富なのが「筋交い」です。
柱と柱の間に斜めに入れられた部材で揺れを受けると「つっかえ棒」の原理で力を受け止め、下階や基礎に地震力を逃がし、建物が倒れようとする力に抵抗します。
筋違は1か所に2本入れたり、構造用の合板を付加したりしてその壁の強さを任意に設定できます。
つまり建物全体のバランスを見ながら一部が強くなりすることが無いようにバランス用く配置することが出来る優れた耐震部材なのです。
ただのべニアでは無く、コンパネと呼ばれるものも違います。
構造用合板として認定されたものを使用します。
建物の外壁側に専用の釘で決められたピッチに留めつけていくことで筋交いのような働きをします。
筋違に対しての利点は壁の外に設置するため壁内部の断熱施工が行いやすく、断熱性能を重視するのであれば有利な工法です。
欠点としては耐力強度のバランスを取ることが難しく、壁の少ない北側などが強くなりすぎてしまうなど偏心率の偏りに注意する必要があります。
また自然素材を使う断熱工法との相性は悪く、壁内結露を誘発する可能性が高くなります。
とにかく壁という壁は全て耐力壁にしてしまえば強い家になるのでしょうか?
それは違います。
窓の少ない面では耐力壁が多く窓の多い面では少ないという状況になりがちです。
また、浴室やトイレ、洗面など小さな空間があり壁が多い場所もタイル翼壁が増えてしまいます。
実は偏った耐力壁の配置はかえって建物を危険な状態にしてしまいます。
阪神淡路の震災において筋交いをいくら入れても耐力壁の配置バランスが悪い建物は倒壊することが実証されました。その後平成12年の基準法改正では耐力壁バランスの確認が法律で施行されました。
このことは今までは設計者や大工さんが経験と勘で入れていたものに根拠が求められるようになったのです。
耐力壁は強固にしないといけない。
筋違で地震の水平力を受けるとテコの原理で一方の柱に引き抜く力が加わります。
土台から柱が抜けようとします。
土台と柱の接合強度の不足で柱が浮き上がれば耐力壁としての機能は無くなります。
平成12年の建築基準法改正では阪神淡路の解析から柱の引き抜きに対する強固な接合が求められ、ホールダウン金物などの接合金物を設置する基準が設けられました。
これ以前は3階建ての建物に適応されていた引き抜き金物が2階建てでも必要になりました。
軸組み工法、在来工法とも言われ国内の住宅の多くがこの工法で建てられ、優れた技術者も多く伝統工法の流れをくみ日本の住環境に適した工法ですが、阪神淡路大震災を大きな教訓として建築基準法が大幅に改定され、地震に対して安心できる建物となっています。
安心できるといえる耐震性の要は、
「耐力壁の数(量)」 「耐力壁のバランス」 「接合金物」
この三つの要素を計算により又は仕様規定により確実に儲けることです。
住いの計画が進み設計図が手元に来たら、耐力壁の位置や数やバランスなど自分でも見て理解してみようとすることが大切です。
また接合金物などの図面がちゃんとあるということが大切です。
接合金物の根拠も聞いてみましょう。
「N値計算法によります」「許容応力度計算法によります」
など根拠となる言葉は限られています。
意外に多いのは構造計算によります。という答えですが注意が必要です。
構造計算はN値なのか許容応力度なのか、そこまで聞いてみると相手も真剣にならざる負えません。
えてして建築会社によっては金物を図面化していなかったり、間違った使い方をしている会社も無いとは言えません。
耐震性の要と言える3要素がそろって耐震性が発揮されます。
すべてお任せでは無く、自分でも理解してみようという態度が大事なのだと思います。