制振工法とは
免震工法が建築基準法の告示において公的なガイドラインが示されているのと比較すると、制振工法にはそのような公的なガイドラインは無く、基準法的には耐力壁でもない「雑壁」と言う扱いになります。
考え方としては耐力壁の一種類であり、耐力壁をサポートし、変形を抑制する「地震の建物損傷を軽減するための工法」という位置付けにあります。
建物に揺れを伝えないのが免震
建物の揺れを制御するのが制振と考えればいいと思います。
制振工法は多種多様で選択に困るほどです。
免震に比べ比較的単純な部材で構成できるため参入メーカーが多く費用も幅が広く保証やアフターも多種多様です。
大きく対応を分けると、電源が必要なアクティブタイプと装置そのものの物理的な特性に任せるパッシブタイプがあります。
アクティブタイプは振動の制御をコンピュータや簡単な電子回路により行います。
このタイプで注意しなければいけないのは地震での停電です。停電になると機能しないので非常時のバッテリーなど付帯設備も必要になり、それらには定期的なメンテ及び交換があるということです。
対してパッシブはオイルダンパーや金属摩擦などで単純に動きを熱に換えて逃がすタイプとなります。
金額的にも免震に比べれば1/10程度、40坪であれば40万程度からの費用で済みます。
基本的な仕組みとしてはオイルダンパーや高減衰ゴムなどで地震エネルギーを熱に変えて逃がすシステムが主流です。
これからの住宅には世代を超えた耐久性が求められます。永いレンジで工法を考え耐久性のある工法を重要視し、「損傷しても倒壊はしない」と言う基本を固めたうえで新しい工法に取り組むべきであると考えます。
免震にしろ、制振にしろ、コストを含めこれが最高と言う工法はまだありません。あれば国が後押ししたり、メーカーや工務店はこぞって採用しているでしょう。
まづは耐震性を上げることが一番必要なことです。
そういう意味で筋交いによる工法は耐震の王道です。
メリットデメリット
メリットとしては免震に対して考えればその費用は1/10以下またはそれ以下、費用対効果は高い考え方です。
建物や基礎の構造、免震のような特殊な基礎構造や、1階床の高い剛性なども必要が無く、通常の工法に設備部品を付加するだけなので施工の良し悪しも出にくく、地場の工務店でも取り組みやすい工法です。
デメリットは壁の中の構造が複雑になり、壁内充填断熱の施工上問題がでますので理想としては外断熱の方が使いやすいですね。
製品としての機能の保証の無い物が多く、保証に取り組んでいるメーカーであっても2年から10と短い事は心配です。
さらに耐用年数も未公表のメーカーから半永久を唄うところまでさまざまで、費用対効果の優劣が付けにくい。
繰り返しの地震に対しての保証もないところが多く2度目3度目の地震に対してもどう機能するのか十分検証されているシステムを採用したいところです。
また、建物が損傷しないわけではなく、建物の変形が始まってからその能力が発揮される仕組みであることを採用する側は忘れてはいけません。
ポイント
制振装置を付けたからといった建物が損傷しないわけでは無くあくまで耐震部材のサポートであるという事です。
冒頭でも書きましたが、すべての基本は「耐震」にあります。
地震時の安全を確保するにはまず「耐震」を十分に考慮し、耐震性能を上げることが必要です。
耐震等級2を又は3を取得する住宅であれば、耐震等級1を満足する制振工法よりも安全性は高いと考えます。