川越市「結びの家」 設計スタートは2022.10
世代を結び、地域を結ぶ
この家ができることで沢山の幸せな結びが生まれる。
シンプルな素材でつくる健やかな住まいです。
伐採の見学会と桧の皮むきからスタートいたしました。
丸太磨いたけれど間取りもこれから、2023後半に工事スタートの予定で楽しい設計の時間が始まります。
家族みんなの記憶に残る住まいづくりが体験できればいいなと思います。
秋のお花が咲いている大安吉日
神主様をお招きし地鎮祭を行いました。
市街化調整区域です。
市街化を抑制する地域ですが、古くからこの地にお住いの家系ですので土地を分けていただき開発許可の上、住まいの建築が可能になります。
途中休憩をはさんだ設計期間でしたが愛でたい日を迎えることができました。
設計期間中に建設費高騰や資材不足などいろいろ経験いたしました、より感慨深いものがある今日の良き日です。
基礎工事の地業工事から鉄筋工事です。
整地し、砕石で地盤を整え、防湿のシートを隙間なく張ります。
コンクリートは止水はできますが防湿はできません、湿気は通してしまいますので湿気を抑えるシートが有効です。
もっとも構造強度的なことには関係ないのでシートは必須ではありません。
よりよい室内環境を求めれば有効な手段ではあると思います。
鉄筋は上部荷重により本数や太さ(径)を設定します。
現場で決めることではなく設計段階に構造計算により決められます。
強度も確保できてコストも抑えられるそんな基礎のあり様を常に考えています。
ベタ基礎にする本当の意味は意外に知られていない。コラムへ行きます。
内断熱の基礎です。
ブルーの板は基礎工事でコンクリート打ち込みの時に一体で施工した断熱素材でポリエチレンフォームと言います。
商品名はスタイロエースⅡ 熱伝導率は0.028KW/kと高い性能を持ちます。
基礎断熱で注意しなければいけないのは、コンクリート面との隙間です。
隙間があると暖かい空気が入り込み断熱材とコンクリート面の間で結露が発生します。
後からこの隙間を見つけて治すことはほぼ不可能なので注意が必要です。
隙間の恐れがある部分はウレタンフォームやシール材で気密を取ります。今回もほんの少しの隙間も無いように発砲ウレタンで処理しました。
床下での断熱ではなく基礎面で断熱することで床下も室内空間と同じ環境になり、床下木部の環境も整えることができます。
断熱的には床下を一体化した連続的な施工ができるため断熱気密の不良が起こりにくくなります。
また土間部分のコンクリートの地熱利用も見込まれ省エネ効果もあるのではないかと考えています。
コスト的は床下で断熱を行う在来の断熱にくらべ高くなります。また基礎断熱に慣れていない基礎工事業者さんが多くしっかりとした監理指導が必要になります。
でも暖かい家になりますよ。
杉と桧の構造材です。
伐採してからずいぶん時間がたちました。
構造材はすべて乾燥材を使いますが、乾燥の仕方にもこだわりがあります。
人工乾燥を使いますが、高温乾燥ではなく37~39度程度の乾燥庫で時間をかけて行う低温乾燥です。
木材の持つ天然成分も保持しながら乾燥させる手法です。
時間がかかることで一般的には敬遠されますがそうそう急がなくてもよいと思うのです。
構造はできるだけシンプルであることを心がけています。
木材は割れや節で強度が下がるのか? コラムへ行きます。
屋根下地は2層に施工します。
もう20年ほどこの手法でこだわりの屋根施工をしています。
1層目の下地が完了し2層目にかかっている写真です。
貼られているシルバーの布のようなものはタイベックシルバーといい防水と輻射熱の反射と屋内の湿気を出す用途になります。
2層目の屋根の垂木が載せられています。
この垂木の成(高さ寸法)は60mmあり、この60mmは空気が通る通気層になります。
この垂木の上にさらに通常の野地板を張り、屋根とします。
このような仕組みにする目的は屋根面からの輻射熱を遮り、屋根面結露を防ぎ、断熱材の性能を十分に発揮させるためです。
埼玉の夏は北海道や東北地方の冬に備える屋根断熱が夏のために必要になります。
快適な暮らしに屋根の断熱はとても重要です。
天井上に断熱材を乗せる天井断熱より屋根直下で行う屋根断熱で小屋裏空間まで室内の取り込む施工方法を基本としています。
耐力壁の施工
今では多くの会社が取り組みようになりましたが、20年前から許容応力度計算を取り入れ、根拠ある構造を目指してきました。
外壁面では指定釘ピッチなど全数確認を行い、内部金物も間違いがないように金物種類を書き込みながら写真履歴を残します。
丁寧な施工でもうっかりした間違いはままあります。
そこは監理者が監理者の目線で確認することが大切です。
見えなくなってしまう場所です。全カ所確認をすることで大きな地震でも安心して寝られます。
ここに貼られている面材(耐力面材)は吉野石膏のハイパーEXという素材で使い始めてからはまだ2年ほどです。
良いところは構造用合板など他の面材と比較して通気性が高く、透湿抵抗が低く、壁内の湿気の排出に効果的であり、壁内結露を防ぐのに効果的であると考えるからです。
もちろん気密シートで屋内はバリアしますがどうしても水蒸気は壁の中に空気とともに侵入します。それが結露に繋がらないようにするいくつかある予防策の一つです。
耐力壁はこのように板状の面材を張らなくても筋交いだけでも構造強度は確保できます。ではなぜ外壁面に面材を採用するのかと言えば、私的にはそれは断熱のためと気密のためになります。
なぜ断熱や気密には面材が優れているのかは長くなるのでまた近いうちにといたします。
2層目の屋根下地です。
1層目は屋根面の水平剛性を高める目的で構造用合板を使います。
屋根面の役割は、雨風を防ぐ、また雪の荷重を支えるだけでは無く、地震力や強風の時の風圧力に抵抗せねばなりません。
地震力や風圧力を受け止め梁や柱に外力を伝えます。
その時に屋根剛性が足りないと力を伝えきれずに屋根から崩壊が始まります。なので歪まないようにしっかりとつくらなければなりません。
1層目の屋根の主な役割は構造強度なのです。
対して2層目の屋根に求められるのは、屋外に直接接するため、構造的な剛性よりも、劣化や腐骨に対する長期の耐久性です。
そのためいつも無垢板を使用しています。
この部位に合板を使ったときの寿命は経験上30年であるといえます。
対して無垢の杉板を使用した場合は古い建物を見たときに雨に濡れない限り、60年以上は大丈夫であるとみています。
ただ構造用合板に比べ釘やビス止めに対しては保持力が弱いため、15mm以上できれば18mmは必要だと考えています。
コストもありなかなか住宅では18mmまでは使いきれません、今回も15mmを使用しています。
棟(屋根頂部)はスリットを開けて下屋根の通気を確保しています。
そして下地はアスファルトフェルトを敷き込み完了です。
アスファルトフェルトの目的はしっかりとした防水です。しっかりと重ねを取り丁寧に敷き込めば大丈夫です。
2層の屋根で室内環境を快適にするとともに絶対に雨漏りは起こしません。
屋根工事が完了
屋根が終わり窓を取り付ける受け材が付けられ、家としての姿かたちになってまいりました。
屋根は日鉄鋼板ガルバリウム鋼板の縦ハゼ葺きです。
シンプルな施工方法で漏水のリスクも低い施工方法になります。
近年ガルバリウムは多く使われるようになりました、理由は軽量であることから過重負担(屋根荷重の軽減)効果が高いことが主な理由で、錆に強いともいわれますが、錆だけなら瓦の方が優れています。
瓦に比べれば落ちますが耐久性も他の屋根素材に比べれば高いといえます。
意外に知られていない利点があります。
それは断熱性、鉄板なのにと思われると思いますが、瓦というのは素材としては緻密な土の塊で、熱容量が高く、温まりにくく冷めにくいという性質があります、夏日中加熱された瓦はなかなか冷えず熱をもったまま室内側の屋根面に輻射熱を送り続けます。
なかなか冷えないのです。
対して薄いガルバは温まるのも早いですが冷えるのも早く夜間熱を伝えることがありません。
これはかなり大きなメリットで屋根断熱に負担をかけません。
価格としては瓦の次に高いといいう感じですが耐久性が高いのでバランスがいいのではないかなとコスト面も含め多く採用しています。
内部に見える青い壁は外部に貼った耐力面材の裏です。
これを使うことで外壁面に木材としての筋交いが必要なくなり、壁厚いっぱいに断熱材が充填できるとともに、断熱施工も単純になり、施工ミスも減らすことができます。
建築的に地震に備えるということ コラムへ行きます。
断熱工事
外部サッシが付き雨が吹き込まないようになりましたので断熱工事を行います。
断熱は充填断熱というこなれた施工方法で、壁厚の中と天井・屋根厚に充填していきます。
今回は屋根面250mm 壁面105mmを圧力をかけてセルロースを吹き込みます。白いシート状は不織布でセルロースを抑える目的で、気密性能はありません。素材は王子製紙のセルロースを採用しました。
セルロース断熱を採用する理由
1:防虫目的でホウ酸が含まれるとはいえ基本自然由来の素材です。
2:熱伝導率も0.04WM/Kとなかなか性能も高いです。
3:他の断熱素材に比べ比重が重く外部との遮音効果があります。
4:他の断熱素材に比べ木材などと同じ自然素材なので調湿性が高いです。(結露しにくい)
5:専門業者が施工するため、ある程度高い施工精度が期待できます。
残念な点は
1:比較的コストが高いこと。
2:重さがあるため適切な施工をしないと沈下の可能性があること。
3:同じく吹き込み断熱のウレタンフォームな度に比べ施工に時間がかかること。
いろいろ考えても木造住宅との相性はとてもよいと思います。
自然素材系断熱材の注意点 コラムへ行きます。
セルロース吹き込みと気密工事
下地シートが終わるとセルロースの吹込みです。入れているのは屋根断熱部分で250mmの吹込みです。
吹き込み系の断熱施工で注意しなければいけないのは、断熱施工前に外壁面のコンセントやスイッチ、ダクト、エアコン開口などがすべて完了しているということです。
後からの工事はできないとは言いませんがなかなか難しくなります。
断熱が終わると気密のためのシートを張ります。
単純な防湿フィルム(ポリエチレンシート)でも気密性能は満たされますが、せっかくのセルロースなので調湿機能が期待できセルロースと相性が良い酒井化学さんのすかっとシートを使います。
単に気密だけではなく夏型結露を防ぐこともできます。
1:夏型結露の抑制
・高湿度環境下で透湿抵抗を下げ、湿気を透過させる事で壁体内での結露を抑制
2:夏型結露の抑制
・低湿度環境下で透湿抵抗を上げ、壁体内へ湿気を透過させない事で壁体内での結露を抑制
性能の高いもの、高機能な素材はコストも高く、全体工事費とのバランスが問題です。
自然素材系断熱材のメリット・デメリット コラムへ行きます。
気密測定
減圧法といい室内の空気を排出して負圧にし、外から入ってくる空気で圧力差がどれだけなくなるのかを調べるのです。
結果隙間の量が分かるというものです。
測定方法は、JISで決められています。
測定する家の開口部 や給気口、排気口、断熱材の隙間等を全て密封し、測定器 を設置します。
1:家の中の空気を排気するファンを作動すると、家の中が 減圧され負圧にな り、不要な隙間から空気が入ってくる。
2:家の中と外の圧力差がおおよそ20Paから50Paの間の5 点から7点を決めて、圧力差と家の外に出ていく風量をグ ラフ上に落とし込む。
3:出てきた結果から、以下の数値を算出。
①隙間特性値(n):グラフの傾きから算出
②通気率(a):内外圧力差が1Paの時の通気量
③9.8Pa時の通気量(Q9.8):日本では圧力差 Δ9.8Pa の時の性能を求め る。
④総相当隙間面積(αA):建物内外の圧力差Δ 9.8Pa時 の通気量から、隙間と等価の単純開 口の有効面積を算出 する。
結果は0297でC値は小数点二位以下を四捨五入した数値を採用なので今回は0.3となります。
0.3がどのくらいの数値かといえばかなりいいほう。
高気密住宅を目指すならC値は1.0以下が目標と言われています。
この家の場合C値は0.3
総隙間面積αA=36cm2
6cm×6cmほどの隙間があるという結果です。
この隙間がどこにあるかと言えば引き違いサッシの隙間や、玄関ドアのほんの少しの隙間や、タッカーの隙間などなど、家じゅうにある小さな隙間の合計です。
C値は設計段階から計画的に取り組めば0.1を切ることも可能です。
ただそのためにはプランニングから開口部の選定から取り組む必要もあり、またコストもかかります。
パッシブでありながらも現実的なところとしては0.5を目標にするべきかなと考えています。
気密測定も終わり、内部は階段や天井下地など仕上げ工事が進んでいます。
階段材は檜です。
製材所から板で運ばれ、現場で仕上げて取り付けられます。
同じ桧でも木が違えば癖も違い色味も違い木目も違います。
階段材は違和感がないように製材所では大きな桧の丸太から木取りをしてもらいますので、段板はみな1本の木から取ります。
全て同じ木でも上か下か取る場所で木目や色合いが違います。
大工は板を並べて1段目をどれにするかなど判断します。
1本の木から取ることも、使う順番を考えていることも、住む人には判らないことです。
でもそんなことの積み重ねが「なんだかいい感じ」になるのだと思います。
また職人さんのその考える、悩む時間を切り詰めてまでコストを求めることもしたくないと考えています。