室温は低くない、エアコンやストーブも付いている。なのに「なんとなく寒い家」そんな家が新築でもあります。
体感温度は人により違いますので一概には言えませんが、そこが「なんとなく」というあいまいな表現になります。
室温とは空気の温度で、体感温度と差が出る場合があります。
一般的に寒さを感じる体感温度は室内での人の周囲、つまり窓、壁、床の表面温度と室温の平均値と言われています。
室温が快適な数字を示していても窓や壁や床が冷たければ寒く感じるというわけです。
特に直接体の一部が接する床の影響が最も大きくなります。
たとえば関東エリアの冬、外気温が0℃の時に断熱が不十分(断熱材は入ってはいるが効果が発揮されない熱還流率4.3W/㎡k)程度の住宅では室温を20℃に上げても床の表面温度は約10℃程度にしかなりません。
体感温度=表面温度10℃+20℃/2=15℃程度にしか感じられないというわけです。
このように室温を上げさえすれば十分な暖かさが得られるわけでは無く、断熱化により壁や床の表面温度を上げ体感温度と室温の温度差を小さくすることが大切です。
たとえば長期優良レベル(温熱等級4)とし、床に杉ヒノキの無垢材を施工すれば、計算上では室温20℃で床表面温度は17℃程度になります。
体感温度=表面温度17℃+20℃/2=18.5℃となりかなり快適な状態になります。
では寒いからと言って床だけ断熱を強化すればいいのかというとそれもまた違います。
寒さを感じる原因の一つに「足元が冷える」という体感現象があります。
これは建物全体の断熱不足や漏気(隙間風)によるものです。
せっかく暖房しても暖かい空気が上方に集まってしまうとこのようになります。
快適に感じる体感温度の住まいはバランスの良い断熱計画と、足元を重視した素材選びがポイントです。
きれいだけれどもつるつるした合板フローリングは冷たく、無垢材は暖かく感じます。
それには理由があります。
木には空気を蓄えておける隙間があります。生きているときには細胞水を蓄えていた場所です。空気を蓄えられる隙間の割合は「空隙率」で表されます。
「空隙率」は樹種により差があり、比較的硬い広葉樹は少なく、針葉樹の方が多くなります。
具体的には楢やタモには少なく、杉や桧には多いということになります。
合板フローリングも元々の素材は木ですが、1.0mm~2.0mmの薄くスライスした木を接着剤で貼り合わせていくので、1.0mm2.0mmでは薄い木の中まで接着剤が浸透し、「空隙」は接着剤の樹脂で埋められてしまいます。
また合板フローリングは均質な工業製品としての品質を求められるために製造工程で圧縮プレスされます。
プレスし圧縮することにより、強固に接着させることが出来ます。また、表面硬度が上がることで傷が付きにくくなります。
この過程でわずかに残った空気と言えども完全に追い出され、木の特質である「空隙率」は限りなく0になってしまいます。
「空隙」はこのように空気を保持し暖かくか感じさせてくれるとともに足の湿気や室内の湿気も保持してくれます。
無垢材が夏でも肌触りがさらさらして気持ちがよいのはこのような理由による現象です。
当たり前のように合板フローリングを使う家づくりが多く見かけられますが、見方、考え方を少し変えてみると違う選択肢が見えてくるものです。
快適な暮らしを考えていきたいと思います。