外張り断熱という選択
毎年陽気がよくなってくると断熱の話題は引っ込みますが、寒くなればまた話題に上りますが断熱は冬だけでなく厳しい夏の暑さに対しても有効です。
外張り断熱や充填断熱、さらに断熱材の種類までしっかり学び選択したいですね。
最近は広告や宣伝で外断熱をうたっているメーカーや工務店を多く見かけるようになりました。
断熱手法は多種多様あり、どのような材料と工法を採用するかはそれぞれ自由ですが、大きな会社が広告に取り上げれば右へ倣えの会社が増えるのはいつものことで、埼玉近郊の工務店でも外張り断熱を採用するところが増えてきたように感じています。
しっかりとした考え方の基に外張り断熱を採用しているところと、建材メーカーのおすすめ仕様をそっくり採用し、施工レベルが追い付いていない工務店なども見かけます。
しっかりしているところはどのぐらいの性能を目指しているのか、数値で判り易く説明してくれるはずです。
ピュアウールによる充填断熱
結露計算の上気密シートは無しで肌に近い壁内を自然な素材としています。
断熱性能は次世代省エネ基準4等級 長期優良住宅認定です。
壁:100mm
天井:200mm
埼玉の木の家ですが断熱材はニュージーランド産です。
国産ウールは有りません。
外張り断熱とは
外張り断熱とは大方の人はご存知かと思いますが、文字のごとく断熱材を建物躯体の外側に貼る工法を言います。
この場合外に「貼る」という施工の特徴から板状のある程度しっかりとした形状を保つ素材でないと成り立ちません。
外張り断熱の断熱材は基本的に化学物質系(石油由来)の素材、イメージとしては(しっかりとした発泡スチロール)的な物になります。
余り自重があると垂れ下がりの危険があるため軽量で高い断熱性能を持つ素材が使われます。
外張り断熱にしなければ家の仕組みとして正しくない工法もあります。
充填断熱がふさわしくない構造とも言いますが、それは鉄骨構造の建物です。
熱伝導率の高い素材である鉄を構造材に使っている建物は外張り断熱をしなければ建物の仕組みとして間違っています。
鉄のように熱に敏感な構造材が壁の中にあると、ヒートブリッジと言って内部と外部の熱の橋渡しをしてしまい、外気が冷えると鉄の構造体が冷え、室内側で鉄骨表面に結露を起こします。
それを防ぐためには鉄の構造体の外で断熱しなければいけません。
これは必ずやらなければいけないことで、疎かにすれば短い時間で構造体の鉄は結露により腐食が起こります。
木の家で外張り断熱をするときの考え方
木造の建物においても外張り断熱は断熱の手段として有効です。
費用に関しては断熱材の厚み分、外に貼るので壁厚が厚くなります。壁が厚くなると窓枠やドア枠など内と外をつなぐ部品の幅が厚くなり費用がかさむ傾向はありますが、建物をすっぽりと包んでしまうので断熱欠損が起きにくく所定の性能が出やすくなります。
残念ながら外張り断熱材に自然素材系断熱材は不向きです。板状のしっかりとした自然素材系断熱材はありません。
構造躯体がせっかく木の家であってもそっくり石油製品にくるまれていることになりますので個人的には少し残念に思いなかなか採用できません。
当事務所で外張り断熱を採用する場合は充填断熱で十分な断熱を行った上での付加断熱として行います。
充填断熱と外張り断熱を別々のものとして考えず、まづ充填断熱を行い、さらに高性能な断熱性能を求める場合の付加断熱と考えています。
つまり充填+外断で2重の断熱です。
断熱性能を表す時にQ値(単位面積当たり熱の損失を表します)を使いますが、次世代省エネ(長期優良)レベルで埼玉エリアは2.7以下となりますが、経験上自然素材系の充填断熱では開口部の性能にもよりますが2.0をクリアーするのがいいところで、さらに上を求めていくときにはプラスアルファ―外張り断熱が有効な手段となります。
木の繊維の断熱材
北海道の間伐材でつくられています。ウッドファイバーと言います。
ウールとほぼ同じ断熱性能がありま、蓄熱性と防音性はウッドファイバ―の方がデータ上優れています。
ウールと同じく呼吸する断熱材なので気密シートは必要ありません(要結露計算)木の家との相性も良くお勧めする断熱材です。
ウールもウッドファイバーもべニアとの相性が悪く、外部にべニアを張る家ではおすすめできません。
建物を外皮と考えたときにより人間の肌に近い場所は自然素材の断熱材とし、バリアー的に外にケミカル系の断熱材を張るということになります。
ただ断熱にかかるコストを考えるときに埼玉近郊では2重断熱でコストを掛ける前にやるべきことがあります。
開口部の断熱性能UPが先です。
アルミサッシから木製サツシへのグレードアップ、ペアガラスからトリプルへのグレードアップや真空ガラスの採用などです。
圧倒的に開口部からの熱の出入りが多いことを考えるときに、外張り断熱の前に開口部の性能UP、さらにその上を考えたときに2重断熱が必要なのだと考えています。
「外断熱だから断熱性能いい」ということはありません。
断熱性能は厚みと熱抵抗値と施工状況で変わるもので工法で変わる物ではありません。
外張り断熱という言葉だけが取り上げられますが、本質を理解してみると自分の家には何がふさわしいのか選択しやすくなります。
木の家にはシンプルに自然素材系断熱材を使いながらどこまで性能を求めるのか考えていきたいです。
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