アーキクラフトでは生活空間内でビニールクロスを使うことはありません。(たまには使います。)
現在製造されている壁紙の種類は
塩化ビニール壁紙
織物壁紙
紙壁紙
化学繊維壁紙
等があります。そのうちの約90%を塩化ビニール壁紙が占めているようです。
これだけ普及するには理由があります。
まずローコスト、施工性がよく、色柄の選択肢が多く、見た目も華やかできれいです。
1995年ごろ「壁紙から発がん性物質」
という記事が新聞などで騒がれ、高濃度の化学物質が検出され、接着用の糊からは発がん性物質、ホルムアルデヒドも検出されるにいたり、その後使用禁止物質や使用量の制限が行われ、少し安全になり?現在に至っています。
なにしろ壁から天井に至るまで使われる壁紙ですから素の使用には慎重になるべきなのです。
また壁紙を張るには接着剤が必要です。
ある程度安全な接着剤もありますがその使用面積が大きいため注意が必要です。
安全とは言い切れないのです。
化学物質過敏症とは花粉症の発症のように突然訪れるそうです。
幸い私はそのような症状ではありませんが、自然素材を扱う仕事柄苦労している方のお話を聞くことが多くあります。
なってからでは大変、出来るだけ自分の関わる建物からそのような症状の方を出さないように願っています。
塩化ビニール壁紙を建築材料の資料で改めて調べてみました。
難燃加工された台紙の上に塩化ビニールゾルを塗布し、熱で発砲させ、色柄を付けるとあります。
塩化ビニールゾルの基、ビニールモノマーというそうですが、発がん性が指摘されています。
塩化ビニールは自然界には存在しない物質となり、廃棄しても分解されず、焼却処分では
強い毒性のダイオキシン等の塩素ガスが発生するようです。
また、塩化ビニール以外にも多くの添加物が使用されています。
柔らかくするための可塑剤
カビ防止の防カビ剤
燃えにくくするための難燃剤
製造過程での発泡剤
全ての素材が明らかではありませんが、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジプチル、リン酸トリブチルなどなどすごく沢山あり、化学が得意ではないのでなかなかその分析まではできませんが、発がん性や、神経系に影響があると疑われる素材も含まれているようです。
疑わしい物はできるだけ排除していくことが健康住宅と言えるのではないでしょうか。
機能性壁紙って必要?
私のスタンスは塩化ビニール壁紙を否定するものでは無く、通気性に配慮した倉庫や、インナーガレージのような暮らしと少し離れた場所での使用は許容できるというものです。
全ての素材にこだわれればそれはベストですがそうもいかない場合もあります。
ただ暮らしに近い部分ではできるだけ排除したいということです。
最近では利便性や見栄えを求めるのでしょうか機能性壁紙というものが、多く発売されています。
たとえば「落書きしても消せる」
たとえば「いい香りがする芳香性」
たとえば「光を溜め光る蓄光性」
たとえば「傷がつきにくい高耐久性」
その他にも調湿壁紙やマイナスイオン壁紙などなど一般に興味を引きそうな言葉が並びます。
その機能を持たせるためには何が使われているのか、もちろん規制物質は規制の範囲内でJIS規定に合格したものなのは判りますが、そのような機能が壁紙に必要なのかが疑問です。
それより設計をする時間の中で材料を選び、施工性からコスト、住み心地まで考えていくべきなのだと思います。
そんなに化学物質を使わなくても、その家で暮らす人が少し考えを変えるだけで、ゼロでは無くても出来るだけ化学物質を使わない家づくりはできるのです。
アンテナを高く良い素材を探す。
最近では「健康に良い」であるとか「エコロジカルな。。。」などという商品も多く見受けられます。
たとえばホルムアルデヒドを使わず、他の薬剤に変えているから「健康に良い」と言えるのか、などということ、ある1面だけを切り取り、エコであるとか健康であるとか言うのは容易いことです。
本質を考え、疑わしきは使わず、使うときは慎重に、のスタンスが大切です。
では何を使うのか
一概には言えませんがキーワードとしては「物にちゃんとした思いがあるもの」
多くは小さな会社かもしれませんが、安全な物をつくるというコンセプトの元で和紙を改良したり、月桃で壁紙をつくったりしている会社があります。
つくる人の思いが伝わるものは探せば意外にある物なのです。
ただ情報の発信力が弱く、こちらのアンテナが高くないと捕まえられないということはあります。
また壁や天井に使える仕上げ素材は紙だけでなく他にもあります。
良い素材を見つけるためにアンテナは高く持ちたいですね。
写真は全て建て主さん参加の手漉き和紙の製造工程です。