ベタ基礎にする本当の意味は意外に知られていない。
一昔前までは逆T字型の布基礎が住宅基礎では一般的でした。
それ以前はロウソク基礎と言ってベースのないI型、伝統工法では寺社仏閣などのような束建て基礎と言い、石の上に載っています。
改正建築基準法で地盤強度が30kn未満の場合はベタ基礎にするよう定められ、それ以降の住宅の基礎はほとんどベタ基礎で造られるようになり、布基礎でも足りる地盤であっても当たり前のようにベタ基礎が採用され、コンクリートがたくさん使われるようになりました。
基準法で定めた経緯については詳しくないけれど、「ベタ基礎は安全」「ベタ基礎なら地盤との接地面積が増えて沈下を防げる。」
と単純に理解している建築関係者はことのほか多い。
しかしながら、単純に1階の全面が基礎になり、接地面積が増えるから荷重が分散されると考えるのはちょっと違う。
許容応力度計算では、土間のシングル配筋ではRC(ビル工事の)の床配筋のような上下のダブル配筋と異なり、実際の荷重は分散されず基礎梁直下に集中荷重として掛かってしまう。
スラブ厚さ150mm程度のシングル配筋のベタ基礎では建物荷重を分散させることはできない。
まして基礎自重も重くなるので分散されて小さくなるはずの荷重も相殺されてしまう。
また、建物荷重が地盤に与える影響範囲は、一般的に基礎幅に比例する。つまりベタ基礎のほうが地盤深くまで荷重を伝え、深い部分に軟弱層がある場合は、布基礎より沈下してしまう。
では沈下を促進する可能性のあるベタ基礎を軟弱地盤の場合に基準法において定めているのはなぜでしょうか。
均等化作用
聞きなれない言葉ですが、ベタ基礎には、荷重が移動して常に水平を保とうとする性質があります。
ある個所が沈下したときに、沈下の大きい部位に合わせるようにほかの部分も沈下し、最終的にはどの場所も同じ沈下量になります。
これを「均等化作用」と言います。
布基礎の場合は荷重を移動させることが出来ないので、均等化せず部分部分で沈下します。その場合布基礎は応力の大きい部分で折れてしまいます。
シングル配筋のベタ基礎であっても布基礎に比べ、たわみにくく、仮に部分的沈下が起きてもその部分への荷重の流入が止まり、隣接部分が過重を負担することになり、最初に沈下した部分は沈下せず、隣接部分が沈下する。この繰り返しで「均等化作用」が進み均等に沈下し安定するのです。
基礎が折れたり、不同沈下することが防げるのがベタ基礎の最大の利点なのです。
ただ、軟弱層が偏っていたり、傾斜している場合は「均等化作用」が期待できないので、注意が必要です。
基本的な部分を理解した上での設計が大切なのだと考えています。
ベストを求めていくと身動きが取れなくなってしまいます。予算と安全と施工性など加味しながらベターな選択をしていくのが実務者として求められます。