例えば使い古した手ぬぐいがあります、汚れてきたので雑巾となり、さらに使い込めば糸もほぐれやがて土にかえります。
古民家という新建材が使われる前に建てられた住まいの素材はやがては土に還すことができます。人の手によってつくられ使い込まれた住まいを大事にしたい、再生したいという気持ちは「もったいない」という美学なのかなと思います。
年間にして1件2件程度ですが古民家の再生、延命に携わることが増えてきました。
依頼されるきっかけは「暮らしの変化」
世代が変わる節目であったり介護が必要になる状況であったり様々ですが、単純に設備の交換程度ではなく、間取りの変更から温熱環境の整備(暖かくしたい)という根本的な暮らしにまつわる問題解決を求められます。
多くの古い建物の場合、必ず傷んだところがあるので部分的に修復したうえで、間取りの変更や設備、内装に手を加えていきます。
通常一番修復が必要になるのは家の北側、土台から交換し修復することが少なくありません、さらに柱の下部も切断し接ぎ木という接骨院みたいな仕事にもなります。
またそのようなケースでは家自体が傾いて、一部沈下しているケースもあり、ジャッキアップして家を持ち上げ、土台を交換し、基礎を作り直すこともあります。
古い建物、古民家といわれるくらいの建物の場合は何度も改修されていることが、手を入れていくとわかる場合があります。すでに先人が柱を接ぎ木していたというケースもあり、修復の仕方に勉強させられることもあります。
また間仕切りも後から設置されていることも多く、間取りの変更は比較的自由になります、古民家の場合、基本構造はほぼ変えることができませんが、その枠に中であればかなり自由に暮らしに合わせることができます。
耐震に関しては現代の考え方とは違う工法で造られていますが、文化財と違い暮らしの場では人命の安全を確保するという考え方から筋交いや金物を使用し、倒壊しない処置が必要になります。
温熱環境に関しては床壁天井の断熱処理は必要です。また気密性を上げるためにアルミサッシや木製サッシのぺアガラスなども使い、隙間風も防いでいきます。
必要なのは現代の暮らしに合わせるということ、場合によっては床暖房なども使い、快適に暮らせるようにします。古民家だから寒くても我慢では末永く暮らすことはできません。
古民家だから昔のように暮すではなく、古民家で今様に暮らすが正解です。
ますます省エネが進む世の中です、エネルギー消費も抑えてこそ古民家に暮らす「もったいない」の美学が生きてくるとそう思います。
もう一つ大切なことがあります。
それは地域で造られ、修繕を重ね、時代を生きてきた建物にはやはり地域の材を使うということ、サスティナブルであることを強く主張するのではなく、「そこはあたりまえ」今まででそうしてきた建物です。
今回の修繕もそこは当たり前、土にかえる地域の素材をできるだけ使い、「もったいない」の気持ちを伝えていきたいと考えています。