パブリック性のある玄関をより多機能にしたのが土間スペースです。
かつての住まいの間取りにはよく見られた土間ですが、一般的な都市型住宅からは姿を消しました。もともとは農家の雨の日の作業場所であったり、屋外仕事から足袋を脱がずに休める休憩場所であったり、近隣のコミュニケーションの場であったりと多用途に使われてきました。昔は石灰、にがりなどを混ぜて突き固めたため【三和土】タタキとも言われます。
靴を脱がない玄関土間である程度の広さを確保するととても多機能に使えます。
雨の日のあそび場、自転車整備、趣味で活用できれば最適です。
リビングと一体で活用できれば利用の幅はとても多岐にわたります。
靴を脱がないというだけでその空間の利用の仕方はまったく変わります。
素足で畳や板の上を歩く心地良さはとはまた違った楽しみが住まいの中に現れます。多くの外国の住まいは靴を脱ぎません。
日本人は素足で歩く心地よさと靴のままの利便性両方を得ることが出来るのです。
私は日本人に生まれてよかったと思っています。
最近ではまた土間の空間が見直され、注目されています。
撒きストーブを置いたり、自転車の整備をしたり、日曜大工や野菜の保管など多目的に使われています。
失われてしまったものが見直されている背景を考えてみると、「暮らし方の変化」が見て取れます。
少し前までは世の中が忙しく、「外で働き、家ではくつろぐ」という生活が当たり前でしたが、「外でも家でも楽しく暮らす」家での過ごし方の多様性が時間のつくり方ができるようになってきたのだと思います。
その時間の中で「土間」は注目されています。一年の1/3程度が雨の日本で、雨の日でも屋外的に活動でき家族と楽しめる機能的な場所なのです。
いいことばかりのようですが使いこなすには、それなりの覚悟が必要です。
普通は玄関を兼ねて第二のリビングとして土間を考えることが多くなりますが、その場合玄関を開けた来客にはいきなり生活の場が飛び込んできます。
昔の農家の土間の延長線上にあるタイプですね。
土間の性格上、生活感を出さないのはまず不可能でしょうし、土間の意味もなくなってしまいます。
生活の場にいきなり来客が入る覚悟を決めるか、もうワンクッション土間の外部で緩衝地帯を設けるか、このことは「暮らし方」にかかわってくる重要な問題ですので設計段階で十分な考慮が必要です。
また、プライベートな土間空間とする場合は、玄関とは切り離し、リビングからの土間とすれば、来客の視線からは玄関という緩衝地帯が設けられますので落ち着いたプライベート空間としての土間になります。
生活を楽しむという感覚で住まいの間取りを考えてみることもいいことです。
部屋数を割り振るだけのnLDK的間取りから逃げ出しましょう。