屋根の形態で変わる室内環境
陸屋根(平らに近い屋根)の特徴として、小屋裏空間が極端に小さく屋根の下の空間容量がありません。
これは木造に限ることではなく、RCでもS造でも同じです。
小屋裏空間は外部環境との緩衝地帯になります。
小屋裏空間が小さいということは空気というすぐれた断熱材が少ないということですから、居室への熱の影響が当然大きくなります。そのため特別な断熱や遮熱処置をしない限り断熱的に不利になるため安易に勧めるべきではありません。
また湿気の点でも陸屋根が勧められない理由があります。
天井上には生活上の水蒸気が自然に入り込みます。入った水蒸気を上手に逃がす工夫をしていないと、冬に暖かい部屋から天井上に入った暖められた空気は、屋根材に触れることにより急激に冷やされ、飽和点に達し屋根下地面で結露します。
確実に気密された天井で天井上には一切室内の空気(水蒸気)は入れない施工が出来ればいいでしょうが、果たして可能でしょうか、木造は動いていますので気密がいつまでもつかわかりません。
必要なのは「ある程度天井上にも空気(水蒸気)は逃げる、でも心配はいらない。」
という考え方の基で屋根の形態と工法を用いるのが永く住まう住宅のつくり方だと考えます。
余裕のない設計は暮らしにリスクを負わせてしまいます。
川越 いろはの家 切妻の2世帯住宅
屋根の基本は切妻屋根、それも屋根勾配は40%から60%です。洋風が似合う急こう配の屋根は台風が多い日本には本来相応しくない物でしたが、金物が進化した現代では力技で固定しますので十分可能にはなりました。
基本は切り妻ですが大きな建物の場合は、風圧力が大きくなるため寄棟などを採用します。
敷地条件やスタイルによっては片流れなどにする場合もあります。
最近は太陽光パネルを乗せやすくするために片流れも増えてきていますが、あまり大きな片流れは北側の家の日差しを遮ることにもなりかねません。
総合的に考えてバランスのよい屋根形状にしたいものですね。
伝統に倣いながら昔からの材料を今の技術で使い、スタイルもよく耐久性も可変性もある住まいをがんばって考えていきたいです。
外観デザインにおいても地域に根ざし、その土地には、その街並には、どんな屋根形状がいいのか考えることは必要なことです。
日本全国で造られる標準仕様の家があなたの土地で相応しいわけではないのです。
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