私の廻りではちょっとした炭ブームで参加しているNPOでも炭を商品化したり、仲間の工務店ではお風呂に入れたり炊飯器に入れたり、トイレに置いたりできる商品をノベルティーで用意したりしています。
「エコロジー」や「ロハス」などという流れの中で近年見直されているのは確かですね。
住宅用では「床下敷込用」であるとか部屋に置いておく「置き型」であるとか、「畳の芯」に入れる、という商品もあります。
どのぐらいの効果があるのかよくわからないのに高いお金を出していただくのは気が引けるので、今のところ設計上使ったことはありませんが、ちょっと真面目に調べてみました。
住まいに関わる「炭商品」の中に書かれている効能、効果を拾ってみると、
床下に敷くと「調湿性能で室内が快適になる」、「化学物質を吸着し快適になる」、「マイナスイオンで快適になる」「磁場がよくなる」、「シロアリやゴキブリが寄り付かない」「冬暖かく夏涼しい」、「防蟻材の匂いが取れる」などなど
室内に置くタイプでも大体同じように化学物質の吸着であるとか湿度調節効果を謳います。
とても良い効果がありそうですが、資料を見ても実際の効果とその数量に対する割合は不明確です。
そこで炭の性質を改めて調べてみました。
炭は多孔質であり疎水性
孔が沢山あり様々な物質や水蒸気を孔に取り込みます。
疎水性というところがポイントで、水蒸気は炭に染み込むのではなく、水をはじく性質のため水蒸気のまま(小さな水の分子のまま)取り込むので、周囲が乾燥すれば吸着した水蒸気を今度は放出するようです。
つまり湿度が高いと湿気を吸着し、乾燥してくると放出する。自然素材が持つ性能ですね。
これが調湿性能と言われる所以です。
確かに床下に敷き込むと効果がありそうです。
ただ忘れてはいけないポイントがあります。
常に湿度が高い場所では効果は最初だけ、ということ、いったん十分に水蒸気を吸着してしまった炭はそれ以上吸着できません。
つまり一旦は炭の性質で湿度が下がるでしょうが、吸着量の限界を超えてしまえばそこにはただ湿気を含んだ炭が置いてあるだけということになります。
実際あるメーカーでは定期的に取り出して乾燥させる。
と注意書きがありました。
床下に敷いた炭を定期的に取り出して乾燥させるって・・・やってくださいとはなかなか言えないな。
となると、効果的な使い方としては通風があり、乾燥時期には風が当たり勝手に乾燥してくれて、ジメジメした時期になれば湿気を吸ってくれる。メンテナンスフリーで考えるのであればそんな場所に置くことがポイントなのでしょうがそんな場所は風通る。ということなので炭の力を借りなくてもいいような気がしないでもない。
「吸着機能」化学物質や匂いなど
炭の吸着機能は2種類あり、「液相吸着」と「気相吸着」というそうです。
住まいに使う場合は主に「気相吸着」空気中の物質の吸着を期待します。
炭の種類によっても吸着しやすい物質は変わるようです。というぐらいでどのような物質をどのくらい吸着するのかは残念ですがよくわかりませんでした。
ただ水蒸気の吸着と違い、空気中の物質で一度吸着されたものは吐き出す可能性はとても低いということです。
この性質であれば確かに浮遊化学物質の低減には役立ちそうです。
どのぐらいの炭の量でどんな物質をどれだけ低減できるのか、具体的な資料はなかなか見つけられませんでしたがこの効果は期待できそうです。
どうも「炭は素晴らしい」的な感覚的な説明が多いのが残念です。
マイナスイオンについて
マイナスイオンとは負の帯電をしている分子です。
正の帯電がプラスイオン分子と言われています。とわかったように書いていますが実はよくわかりません、ごめんなさい。
マイナスイオンもプラスも調べれば調べるほど良くわからないというのが正直なところですが、一般的にマイナスイオンは、「精神の安定に寄与」「免疫力の向上」「植物の生育促進」「血液浄化」などなど優れた効果があり、プラスイオンはその逆というのが通説のようです。
これは実際に期待していい物かどうか難しいです。
だいたいにおいて「健康に良い」と言われるようなものは商品価値が上がるのでかなり誇張されている場合が多い。という考えなので否定はしないけれど積極的にはお勧めしないことにしています。
磁場がよくなる。
これが最もクレッション
地表には自然に流れている微弱電流があり、場所によってはその強弱で身体に悪影響を与えているので磁場を炭で安定させる。
とか電磁波の影響が低減できる。
というのですが、「炭はマイナスイオンの効果から磁場を安定させる。」ということが根拠のようです。
沢山の方が真正面に取り組んでいることも確かなのでいずれわかりやすい説明なり効果が立証されるのを待ちます。
今の時点ではどうも「科学的に立証されている情報とそうでは無い情報」が混在してよけいわかりにくくなっているようです。
今は信じる者は救われるということで理解し、磁場については人には勧めません。
シロアリ、ゴキブリが寄り付かない
シロアリは一般的に湿度の高い場所を好みます。湿度の高い場所にある木材は「木材腐朽菌」の活動が活発になります。
「木材腐朽菌」は木を土に還すうえで大切な役目を持つ菌類です。
この菌がいるおかげで森林の循環が行われています。
でも家の下にはいてほしくないですね。
シロアリは「木材腐朽菌」が放出する物質に誘引されるそうですからこの菌を抑えればシロアリ被害は減らせそうです。
そのためには乾燥が一番、炭の水蒸気吸着効果で床下の湿度を下げればシロアリ被害を防ぐことに繋がります。
先ほど書いたように定期的に乾燥させ炭の機能を維持することが大切になりそうです。
それが出来なければ有るのも無いのもそう変わらないのかなと思います。
またゴキブリについてはまったく効果があるように思えないのですがどうなんでしょう?
シロアリがいる⇒湿気がある⇒ほかの虫もいる⇒虫が餌になる⇒ゴキブリが暮らしやすい。
ということかな。
冬暖かく夏涼しくなる
冬暖かいという効果の根拠として言われているのは「多孔質な炭は断熱性能が高い」ということです。その孔に動かない空気(動かない空気は優れた断熱効果がありますペアガラスなどもこの効果)をため込むため断熱効果があり冬暖かいのだということです。
また直接地面やコンクリートの冷たさを伝えないのだ。ということもあるようです。
確かにその効果は小さいけれど(体感できるかどうかは別として)あるでしょう。
夏涼しいという効果の根拠は湿度が下がるから、ということです。
建物の中とはいえ、窓を開け締めしたり緩やかにでも流れている空気中の湿度が床下や部屋の片隅に置いた炭の効果でどれだけ下がるのか、そしてその効果でどのくらい涼しく感じるのか私には体感できないと思いますが、その効果は確かにあると思います。
夏も冬も効果はあるけれど体感できるかどうかは人による。建物の構造にもよる。
というところです。
防蟻材の匂いが取れる
これは先ほどの吸着効果で期待できる性能です。
気相吸着で吸着した物質は再放出しにくい性質があるようなので十分期待できそうです。
室内に置いて不快なにおいを吸着させる効果もありそうです。
炭を建材として住まいに使う効果で悪い情報はまず見受けられません。
昔から使われてきた素材で製造エネルギーもほぼゼロ、何しろ自分で燃えて炭になるのですから。
しかも森林資源を循環させることが出来、昔から人の暮らしに結び付いてきた素材です。
悪い物のはずがない。
そんな思いのまま製品化され、後付けで効果が謳われ、実証が後になっているという感じです。
科学的に統計立てて立証されている物しか信用しないわけではありませんが現状は感覚的すぎるように感じます。
「優れた効果があるので使いましょう!」
とはまだ言えないかな。
言えるとすれば「体感できないかもしれないけど住まいには良い素材なので予算に余裕があればその性能に期待して使いましょう。使う場合は定期的に乾燥させたりメンテナンスはしてくださいね」
というところです。
炭は確かに優れた機能があるようです。
その特徴や性質を理解して無駄なく上手に使いたいですね。
これからも住まいに使うという前提で炭は勉強していきたいです。