自然素材系の断熱材は大きく分けて植物質原料と動物質原料になります。
植物系で一般に流通しているのは木の断熱材ウッドファイバー フォレストボード 炭化コルクがあります。
下記のデータはウッドファイバーHPより拝借しました。
項目 | 数値 | 備考 |
---|---|---|
熱伝導率(W/m・K) | 0.038 | JIS A 1412-2 |
比熱容量(J/kg・K) | 2100 | - |
透湿率(ng/m・s・Pa) | 114 | JIS A 1324 |
ホルムアルデヒド放散量 (μg/m²・h) |
2.0 |
(F☆☆☆☆基準値以下:告示対象外) JIS A 1901 |
VOC放散量(μg/m²・h) | 0.2~0.6 |
(厚生労働省濃度指針値以下) JIS A 1901 |
※VOC放散量はトルエン・キシレン・スチレン・エチルベンゼン・パラジクロロベンゼンの値。μg/m³の場合は定量下限値以下。
※記載数値は、情報提供のみに供されるものであり、保証するものではありません。
フォレストボードが針葉樹の杉の皮なのに対しウッドファイバーは針葉樹の間伐材が原料となっています。
ウッドファイバ―は北海道で生産されています。
生産工程においてもバーク(樹皮)燃料を使うなど極力化石燃料に依存しない製法を採用しています。
製品バリエーションも広く40mm~140mmまで揃え、サイズも多く展開し使いやすくなっています。
ウッドファイバーは製品の安定の為に石油由来のオレフィン繊維が10%ほど混入されていますので、フォレストボードに比べれば工業製品に近く、シックハウスの規制対象品でありF4の表示となります。
シックハウス規制対象
フォレストボードと違い完全に自然素材のみの製品ではありません。
防火性能を付加するために難燃剤として、ポリリン酸アンモニウムが使われています。
また、製品の形態を安定させるため石油由来のオレフィン系繊維が約10%ほど混入されています。
性能を上げ使いやすくしている反面完全な自然素材とは言えません。
性能物性特徴
商品としての完成度を高めるために各種性能データを公的機関で検証し公開しているところは使う側としては安心できる体制です。
使う側としては幾ら素材が良いということが判っていても根拠がほしいのです。
自分で作っている物であれば自信を持ってお勧めできますが、そうではないのでまずは根拠のあるデータがあり、欠点も利点も納得して採用することが重要なのです。
フォレストボードは廃材扱いであった杉の皮を再利用したもので資源の循環を意識した自然素材系断熱材で秋田県で生産されています。
原材料:杉樹皮、バージンパルプ、コーンスターチ(トウモロコシ原料の糊)
となっていますので、化学物質に過敏な方にはお勧めできると思います。
また、自然素材系ですので建物解体時にも土に還る環境負荷の少ない断熱材です。
また、珪藻土や和紙張りなどフォレストボードに直接施工できるということが紹介されています。
副資材を使わないで施工できるのはメリットになると思います。
肝心な断熱性能としては同じ厚みではウールやセルロース、ウッドファイバー、コルクにはかないません。
国産であり、製造エネルギーも極端に低く、安心できる成分なのでもっと普及してもいいと思いますが現状ではあまり使われていないようです。
よい商品なのに普及しない理由は、断熱性能と商品のバリエイションの少なさとコスト、生産規模が小さくコストが高めではなかなか使えません。
2015年時点で50mmを超えると特注扱いという体制では使う方としては二の足を踏んでしまいます。
壁でさえ100mm+アルファーなければ省エネ等級4が取れないのですからせめて100を標準体制にしてほしいところ、50mmをダブルで入れてくれということのようですが、施工手間が単純に増えてしまいます。
実際に使うことを考えるとウールやウッドファイバーを充填断熱材として使い、外張り断熱としての付加材料として25mm程度の商品が有り使いやすいと思われます。
使う人が増えて大量に生産できるようになればバリエイションも増えてくるのかなと思いますが難しいところですね。
シックハウス対策と防蟻性能
この商品は杉の皮でつくる断熱材です。
最大のメリットは完全に自然素材だけで製品化しているというところにあります。
化学物質過敏症の方でも安心できるのではないかと思います。
ただ過敏な方は実際に採用する以前にサンプルを取り違和感がないかどうか試してみることが大切です。
シックハウスの法規制に関しては当然規制対象外ですので安心して使えます。
主原料は
杉樹脂:49% バージンパルプ49% コーンスターチ(トウモロコシ)2%
気がかりなのは、耐シロアリ性能です、杉の皮ですから、シロアリ食害試験のデータが販売会社のHPに公開されていました。
参考資料
■シロアリや腐れに強い
フォレストボード代理店HPより抜粋
杉の樹皮がシロアリや腐れに強いということは経験的にもわかっていましたが、改めて実験を行った結果、それが確かなものであることが明らかになりました。
イエシロアリの摂食試験結果
|
シロアリによる食害量(重量比) |
フォレストボード |
5~10%程度 |
杉の辺材 |
30%程度 |
腐朽菌による重量減少試験結果(重量比)
|
カワラタケ |
キチリメンタケ |
フォレストボード |
なし |
1%前後 |
杉の辺材 |
20~26% |
36~49%
|
※添付写真はフォレストボード関連企業さんサイトより拝借しました。
秋田県製 対 北海道製
杉皮製 対 針葉樹間伐材
熱伝導率
フォレストボード=0.044W/(m.k)
ウッドファイバー=0.038W/(m.k)
比較参考に高性能グラスウール24kg=0.036
(熱伝導率とは熱の伝わりやすさを表し数字が小さい方が熱が伝わり難い素材となります)
参考:断熱材の厚みの計算
R=d/λ R:熱抵抗値 d:厚さ λ:熱伝導率
で計算するとウッドファイバー100mmの断熱性能を得ようとするとフォレストボードでは115.7mm必要になる。
この意味するところは意外に大きく、構造柱が105で足りるのか全て120にするのかという構造材の選定にも関わり、断熱材のコストだけの問題では無くなる。また屋根においては30mm以上の差が出てくることになる。
熱容量に関してはどちらも大きく暖まりにくく冷めにくい特質があります。
これは外気温に対しての反応が鈍く室温が安定しているとも言えます。
またウッドファインバーは40kg/㎥と密度が高く防音においても期待できます。
おそらくフォレストボードも同程度の密度があると思われます。
参考までにGW16kgの密度は16kg/㎥ウール断熱のウールもGWと同程度の密度になりますので幹線道路沿いなど防音も考えたい場所では密度の思い木質繊維系は有利になります。
比較結果
より製品化されたウッドファイバーの使いやすさを選ぶか、より自然素材のフォレストボードを選ぶかで判断は別れそうです。
施工性で選択する場合はウッドファイバーが有利
より自然素材であるという観点で選べばフォレストボードが有利
同じ厚みでの断熱性能で選べばウッドファイバーが有利
輸送にかかるコスト、製造にかかるコストはほぼ互角
吸湿性能や熱容量など細かく検討してみたいところですが残念なことにフォレストボードの公開データが少なく十分な比較ができません。
今後また機会があれば細かく検討していたいと思います。
自然素材系断熱材は特質を理解している施工者に依頼しましょう。
自然素材系断熱材は、合板を使う使わないで結露の安全性などが大きく変わります。
外壁面屋根面での通気工法とセットで使うべき材料です。
せっかくのいい素材を使っても使いこなさなければ残念な結果になってしまいます。
その特質をよく理解して使いましょう。
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