木材表面の割れや節で強度は下がるのか?
先日お客様から質問をいただきながら具体的に説明できなかったので再度調べて見ました。
質問をいただいたのは「木材に節などがあるとそれが欠点となり強度が落ちるのではないですか?」というご質問
その時は「節があるとその周辺は成長因子が大きく、繊維も密になり逆に強度としてはその周辺は強くなる」というようなことをお話ししました。
何かもう少し具体的な説明が無いものかと調べてみました。
先ず、構造用製材の基準(構造強度)を定めているJAS基準には表面割れや小口の割れ、抜け節(死に節ともいう)以外の節の基準は設けられていません。
節といっても中がぼそぼそで崩れてしまう抜け節は確かに強度的にその部分が欠損になり強度が落ちますが、きれいな切断面の節は強度には関係がないようです。
主に木材の乾燥により発生する、単純な表面割れや小口割れは繊維の連続性を絶たないため繊維方向に働く曲げや引っ張り、圧縮力の低下にはつながらないと考えられています。
参考資料;スギ構造材の日割れと曲げ強度性能との関係 島根県
杉構造材ン乾燥割れと強度の関連性 鹿児島県
林業試験場などのデータを調べていくと意外な面も見えてきました。
割れれば少なくとも強度低下に繋がる方向であろうと思われますが試験結果からは割れが多く生じる材では曲げ強度が高くなる傾向があります。
これは島根県の考察を読むとなるほどと思うのですが、表面割れが出やすい材は材の密度が高く、密度の高い材は曲げ強度も高いということ。
木材の収縮率は密度に比例し、同一条件下で乾燥したときには密度の高い材ほど割れやすいということ。
まとめ
1:表面割れであれば強度低下にはならない。
2:節があると乾燥収縮が節のない部分とある部分で差ができ表面割れを起こす場合が多い。
3:節があるということは材の密度が増す方向になり、強度は増す。
これは今回の新知識(私的な)でしたGoodです。調べてみるものですね。
そうはいっても割れのない素直な材がいいですね。
ただし表面割れのある木材に接合金物を取り付けた場合は取り付けビスの長さにもよりますが、木材単体の強度ではなく接合部の強度として影響がある場合があります。
同じくボルト接合も割れの方向とボルト挿入方向が一致した場合に強度低下の可能性が接合部として出てきます。
住まいは木材単体で考えるのではなく構造体(システム)として強度が必要になるため、接合部に割れが来る場合は注意が必要であるということになります。
では節はどうなのか。
節に関しても(抜け節、死に節は強度低下大)試験データとしても強度の低下は認められませんでした。
これは経験上ですが他の木材部分より節部分はビスが貫通しないほど硬度が高く、硬いけれど粘りがないように感じます。粘りがないため限界を超えると崩れるように割れるため、仕口の先端などに来ないようにすることが注意点だと思います。
また、人工的な割れ「背割れ」*見つけ面に割れが出ないようにあらかじめ割れを誘発しておく処理
についても深さ1cm程度であれば強度への影響はないが材の2/3以上になるとせん断力により強度の低下が見込まれるようです。
背割れを深く入れたいなどそのような場合の対象方法としては、安全率を見込み材のサイズを大きくするなどの方法が有効です。
まとめ
木材繊維の連続性が保たれている表面割れや節に関しては材としての強度に影響は無いが、接合部分では注意が必要。
材厚さの2/3に達する割れで強度低下が認められる。
背割れを大きく入れたい場合などは強度に余裕を持たせることがポイント。