集成材の強度は製材(無垢材)より強いのか?
「集成材は無垢材より1.5倍の強度がある」こんなことを言う工務店さんがまだいます。
まだと言うのは、確かに昔はこのように言われていた時期がありました。
現在ではそれは古い知識であり、勉強不足と言うものです。
木材の規格は何度も改正されてきました。
1990年にJAS規格が改正されるまで、構造用集成材の曲げ許容応力度は同じ材の製材(無垢材)の1.5倍と表示されていました。
その当時は確かに「同じ樹種であれば、構造用集成材は製材の1.5倍の強度がある」と言っても間違いではありませんでした。
でもそれは1990年までの話です。
そこから知識が停滞している工務店に任せるのは勇気がいることです。
現在の集成材の規格は強度と樹種は直接的に関係なく、強度特性はEとF(ヤング係数と曲げ強度)で表されています。
同じ樹種たとえば杉の集成材であっても基準強度が違う構造用集成材が何種類も製造され、限度はあるにしろ特注であれば強度をこちらが指定して製作してもらうことも可能です。
また、構造用製材(無垢材)の杉であっても産地により、山により、個体により強度はまちまちなのです。
つまり単純に「集成材は無垢材より1.5倍の強度がある」とは言えないのです。
さらに造作用集成材においてはそもそも強度規定さえないのですから無垢材に比べ強いも弱いもないのです。
ですから集成材の強度は製材(無垢材)より強いとは一概に言えないのです。
木造の材料の世界は長い間、目ききと言われる「勘と経験」により成り立ってきました。
地域の材料を使う限り、ある程度、経験と勘は当てになります。しかし世界中から木材が輸入されています、ロシアの材料に、東南アジアの材料に「勘と経験」が当てになるのでしょうか。
木造とはいえ「勘と経験」の世界から「性能と計算」の世界に軸足を移さなければいけません。
山側も「目が詰まっていい材料だから」と言うだけではなく、
「目が詰まっていい材料だからこれだけの強度が出る」
とデータとして提供していかなければいけません。
残念なのはせっかく強度が高い製材(無垢材)があっても、強度試験が行われていないためJAS集成材に比べ強度が優れている証明が出来ないことです。
データで証明できなければ、構造計算では大幅な安全率を設定します。せっかく強度が出ている材料なのに考慮できず無駄になり、結果、大きな材料を使い材料費がかさみ、高い買い物になります。
「集成材は無垢材より1.5倍の強度がある」などと言わせないためにも製材(無垢材)にも強度試験の上データを添付してください。
「地域材」と言うだけではなく「品質の証明ができる地域材」を使いたいのです。
構造用集成材を否定しているわけではありません。
大きさスパンや大きな荷重がかかる場合は構造用集成材を積極的に使います。
無垢材で大断面になると大木から木取りすることになり、その希少性から材料の値段も当然高くなります。
コスト・構造・見た目などなどそれぞれの特徴を踏まえ。総合的に考えて使っていきます。