杉戸町 昭和のお家改修
春先からお話をしてきました。
昭和初期に建てられた田の字プランの典型的な農家のつくりです。何度も何度も改修され手が入れられてきましたが、一番の不安は構造的なこと、当時盛り土した上に立てられたこの家は東にかなり沈み込み一目でわかるほど。
また、長い年月の間に地震などを経験し、瓦もずれたりして雨漏れも数カ所、このまま放置すれば劣化の一途
スケルトンに近い改修をすれば確かに沈下も修繕でき耐震性も向上できるでしょうが費用も大きくかかります。
このお家は≒50坪ほどありますが、スケルトンリフォームを考えると30坪ぐらいの新築なら優にできてしまいます。
実際家族構成から見るとこの家は大きすぎます。
減築も考えましたがこれまた一部壊して再生もまた大変なこと。
様々なことを考え優先順位をつけ、結論は再生となりました。
素材にも配慮しながら延命的な再生を行います。
ご要望は
1:素材に十分配慮したい。(基本的に化学物質を排除したい)
2:介護を見据えバリアフリーな間取りに改修したい。
3:耐震強化をしたい。
4:暖かくしたい。
昭和のお家完成引き渡しができました。
傾いていた建物を≒15cmジャッキで上げて、土と瓦を下ろし屋根を軽量化し、さらに構造補強で耐震性を上げました。
ほぼスケルトンまで解体し、断熱改修も、設備の更新も行いました。
50坪あるので解体し30坪ぐらいの新たな住まいを建築するという選択肢もありましたが、改修を選び、設計からだと≒1年半という時間がかかりました。
また、素材に敏感な依頼者のためにほぼ全て鉱物原料と有機系自然素材にて内装をほどこし、接着剤なども膠を使い、原料に不安の残る下地のパテなども使用しないなど室内環境には普通以上に配慮しています。
築80年のこの住まいは少なくとも後30年は現役でいる予定です。
長い時間ご不便おかけしました。
ありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いいたします。
ユニークなキッチンができました。
アイランドのセンターキッチン、どこからでも手が出て楽しく調理ができそうですね。
基本的に一人で使うには不便そうですが、二人で立つ前提です。お1人は車椅子なのでキッチンの周りをグルグル廻れると便利なのです。
こんな感じで使い方で自由につくれれば楽しいキッチンが出来そうです。
引き出しも何もなくとてもシンプルなつくりです。
棚を作ったりキャスター収納を入れたり使い方は使う方次第、使いながら進化していくキッチンです。
センターキッチンアイランドです。
いろいろなタイプのキッチンをつくらせていただいてきましたが、ここまで矩形なキッチンは初めてです。
希望は車いすがぐるぐると廻れること、基本的に二人で立つので調理スペースが2ヶ所ほしいこと、などなど相談の結果このような形となりました。
どこからでも手が出せるキッチンです。
炊飯器などは棚に入り、スライドで取り出せます。
また建具は無くて棚がオープンとなります。
こらからステンレストップを載せて完成となります。
洗面もいたってシンプルな壁付け陶器です。
全面的に白壁はドイツ製紙下地KOBAUを使った西洋漆喰で日本の漆喰よりもさらにアルカリ性が強い性質があります。
今回は極力余計なものは使わないというコンセプトなのでパテや下地調整剤などなにも使わないピュアなつくりです。
基礎を含めた構造部分の補強が終わり下地関係の作業をしています。
床は根太の上に杉板15mmこれは下張りでこの上に仕上げの杉板を張ります。
仕上げも15mmとします。
30mmの材を下張りをしないで貼る場合よりも下張り15mmに仕上げを15mmで合わせて30mmとしたほうが床の剛性は上がります。
半面30mm1枚とした方が足触りは柔らかくなります。
2階床であれば床面の剛性を優先して2重張りとし、1階は30mmないしは36mm程度の1枚張りもよいと思います。
構造的には1階の床の剛性は地震時に大きな影響はありません。
2階床は地震力を1階に伝えるために剛性を上げる必要があります。
ただ必要十分に剛性を上げるにはただ2重に貼るだけでは足りず、火打ち梁を多く入れたり、構造用の合板を使用しなければならない場合もあるので注意が必要です。
この箱階段は再使用します。
砕石を敷き込み転圧
この上で湿気除けの防湿シートを張り込みコンクリートを打ちます。
構造柱って本当に少ないのです。
今回は新たに壁も作るので柱が増えます。
柱が増えるということはそれぞれが上部荷重を負担することになるので古い大黒柱の負担も減ります。
今まで重かったでしょうご苦労様でした。
とはいえ差し鴨居の梁組は現状のままなので負担割合はやはりこの大黒柱が負担することになります。
瓦を下ろしずいぶん建物も軽くなりました。
1階の天井の撤去も終わり伽藍のようになりました。改めて柱の本数の少なさに違和感があります。
基礎が全くないのも伽藍のようです。
今のつくりではたくさんの柱を使いますし、在来工法とはいえ取り外せない耐力壁もたくさんあるのでそれを見慣れているとスカスカです。
大黒柱で支えているのが一目瞭然
大一番のジャッキアップ
10トンと6トンジャッキを要所に入れ試みます。伝統工法は壁ではなく仕口(柱と梁の接点)で持っているため部分的に力を加えると仕口が破壊されるかその部分だけ動いて全体は動かないで凸凹になってしまいます。
なので要所は仮にべニアを張り壁全体で動きうようにしたり、古い土壁を残しながらジャッキアップします。というのは今回初めて知りました。
こんなことは技術力のある施工者が頼りになります。
午前中で≒5cm 一日かけて≒12cm
最大沈下が16センチでしたのでここまで、ここまでというのは現場の大工さんたちの判断で、これ以上も上がるだろうけれど仕口に負担がかかりすぎて危険という判断
すっかり解体してからの組み立てならば完全に治せるのでしょうがここまでとします。
実はミシミシミシミシとひやひやしてましたよ。
あとは床組で水平を出していきます。
外から見ても建物の背筋がピンと伸びでなんだか気持ちがいいと、建て主さんもお喜び。
こういうことにかけては福弥建設さんが頼もしいのです。
マニアックな仕事が大好きな工務店です。
足場とシートを掛けたら先ずは瓦下ろしから。
完全手作業でい一枚一枚はがしておろしていきます。
予想以上の泥の量に苦戦、泥の下は杉皮葺き、杉皮は全然傷んでいない、もちろん雨が漏って濡れた痕跡がある部分はそれなりに傷んではいるけれど、そして杉皮の下の野地板杉板も健在でした。
≒80年でも水に触れなければ全く劣化無し、素材の力を改めて確認できました。
今の住宅は耐震強度を上げるために合板を使うのが一般的で、屋根に杉板はあまり使われないのです。どうしても強度を優先すると杉に関わらず小幅の板では水平強度が確保しきれないのです。
とはいえ工夫次第では強度も確保しながら小幅板無垢材を使う方法は一般的ではないかもしれませんが工夫次第でできます。
合板の場合は結露対策などがしっかりなされていないと、ここまでの長い時間にわたり健全な状態ではいられないでしょう。
素材選定は耐久性や質感や予算やいろいろ考えるといつも悩ましいのです。
床下に潜るとすべて束建て
今のような立ち上がりのある基礎が無いつくりで要は地面の上に建物が置いてあるだけ固定されていないといえばいいのかな。
昔からのつくりなのです。
地盤の問題で沈下さえなければ十分な構造でしっかり作られていることを確認しました。
床下の乾燥状態もよくシロアリなどの被害も見受けられない。
問題は沈下で建物の約半分が沈下、沈下していない部分に対して≒16cmは沈んでいる。慣れているといいますが慣れていないこちらは平衡感覚がおかしくなるくらいです。
現在の建物に比べ基礎が無いので比較すれば沈下した部分を上げるのは上げやすいといえば上げやすいですが、なんといってもこのころの建物は重いのです。
屋根の瓦も土、壁も土、重さと土壁が抵抗してこのままでは上がりません。
いずれにしろ耐震性向上のため瓦屋根は板金に替えたいと思うので軽くすればなんとかなるかなという感じです。
諸々調査しましたので作戦を練ります。