自然素材の住宅設計では使う部位での優先順位付けが大切です。
「自然素材を使う場所の優先順位」
1位:床材
2位:壁材
3位:畳
4位:接着剤
その他(断熱材や床下地材、建具など)
「少し昔に帰った家づくりがいいですね」という考えで、埼玉の木を使い、漆喰や和紙、杉板などを多用した家を設計していますが、すべてがすべて自然素材でまかなえるわけではありません。
それぞれの家に暮らし方があり、予算もまちまちです。
自然素材を使うときには家の部位で優先順位を付けることで予算に合わせた家づくりが可能です。
まず優先すべきは床材です。
床は内装材として室内に露出し、面積として大きくなりますが、最大の理由は肌に最も触れる部分であり常に触れている部分であること、さらに有害物質は床面に滞留すると言われますし、横になったり、座ったり、生活面で常に呼吸器と近いのも床です。
自然素材の住宅設計では暮らし方を考えながら使う順位を決めていきます。
自宅の寝室で過ごす時間は人生の1/3近くにもなると言われています。
睡眠中も呼吸はしています。床からの揮発性物質は知らない間に体内に入るのではないでしょうか。
まずは床を安心できる素材でつくりましょう。
ではさらに床の中でも使用場所の優先順位を付けるとすればどうでしょうか。
私の考えでは1位が寝室です。
理由は家の中で一番多くの時間を過ごす場所だからです。
次に使用頻度から行くとリビングとなりますが、通常の生活空間であれば床材を部屋ごとに変えることはお勧めしません。
変えるとすれば明らかに使用用途が違う場合、例えばオーディールームや趣味の部屋など完全に場面を切り替えたい場所となります。
フローリングの現実
フローリングと俗に言われる安価なものは、実は表面0.2~0.5mm程度に薄くスライスした木をケミカル系の接着剤で合板に貼り合わせてあります。その合板自体も薄くスライスした木を何層にも接着剤で貼り合わせたもので、木というよりは接着剤の板のようなものです。
当然湿気を吸ったり吐いたりはしませんし、木材と認められないので、解体の時には産業廃棄物となり、塩ビなどと同じ扱いになります。
理由はやはり内装材として大きな面積を閉め、床ほど直接触れることは少ないですが、呼吸器には常に近いところにあります。
部屋としてはやはり寝室から優先して使いたいところです。
素材としては漆喰がお勧めです。泥壁下地でなくてもプラスターボードの下地でも使える調合済みの漆喰や粘土質原料のモンモナイトなどもお勧めです。
また、和紙の壁紙や本物の和紙クロスも風合いがよい素材です。
漆喰はアルカリ性でカビにも強く衛生的です。
漆喰も和紙も静電気を帯びにくくビニールクロスのように埃を吸着することがありません。
自然素材の住宅設計では昔から使われてきた素材を使います。
既に長い年月使われてきた信頼の置ける素材です。
ビニールクロスの現実
「子供が落書きしても消せる」「いい匂いがする」「消臭・脱臭機能がある」「電気を消すと光る」
機能性壁紙というそうですが、なぜ必要なのかがよくわかりません。需要があるから製品になっているのでしょうから求める人が少なからずいるということですが、本当に必要でしょうか。
「壁紙」と言えば柔らかい感じもしますが、要はビニールです。
石油由来のビニールで包まれた「ビニールハウス」としての住環境なのです。「日本の普通の家」=「ビニールハウス」ではいけないと考えています。
現代の住宅火災では化学性建材からの有毒ガスによる死亡が多く伝えられます。
火災になることを考えて家をつくる人はいませんが、もしかしたら自然素材の家であったら逃げられたかもしれません。
三番目は畳
畳も面積が多ければ床と同じで一番ですが一般的には一部屋程度が多いので壁の次としました。
「日本人の心」などとも言われていますが、実際には年々使用量は減っています。
暮らし方に合わなくなっているのか、贅沢な空間になってしまつたということでしょう。
現在の畳の表は90%程度が中国産と言われています。昔は泥で染められていましたが、現在では薬品染めが主流だそうです。どのような薬品で染められたかわからない畳の上で子供を寝かせたくはないと思います。
畳の芯も藁はダニなどで敬遠され、化学製品に変わりました。
今、安心できる畳の部屋をつくることは難しくなっているのが現状です。
自然素材の住宅設計ではできれば藁床を使いたいところですがダニやカビの問題から難しい面もあります。
ポリエステルの芯材などを使った心材など化学物質に過敏な方でもし癒おできる可能性のある素材などもあります。
また藁床にこだわる方にも減農薬という指定であればまだ国産が入れられます。
有機栽培天然乾燥の藁床はかろうじてありますが絶滅寸前です。
木部用 ニカワ ㈱シオン
四番目は内装に使う糊(接着剤)
接着剤の使用量は、仕上げ材によっては一般の方がイメージするよりも大量に使います。
ビニールクロスでも和紙でも接着剤は紙全面に塗ります。
つまり壁面の面積全てに接着剤が使われるのです。板張りではほとんど使うことはありませんが、薄いものを貼り合わせるにはどうしても必要になります。
せっかく和紙などの自然素材を選択してもその下全面がケミカル系の接着剤では残念ですね。
タピオカや澱粉のり、コーンスターチを使った壁が壁紙用接着剤などがあります。
また、床材も壁ほど大量の接着剤は使いませんができれば自然素材の接着材を使いたいところです。
木部用には古来から優れた接着剤が使われてきました。
膠です。
膠は動物質のタンパク質が原料で効果は遅いですが、ケミカル系に負けないぐらいの接着力があり、昔から木工芸品や楽器などに多く使われてきました。
弦楽器などは膠が無ければ作れないというほど木部との相性はいいのです。
自然素材系の接着剤で理解しておかなければいけないのが、自然であるが故のカビや劣化です。
防かび剤などが入っていないピュアであればあるほど、条件によっては黴が出たりすることがあります。
使い方、暮らし方にそれなりの注意が必要なのは言うまでもありませんがせっかくの木の家であれば接着剤も自然素材を使いたいところです。