そもそも断熱材は必要でしょうか?
50年ほど前までは断熱材を壁や天井に入れることはありませんでした。
夏を旨としたつくりは大きな開口部があり、夏は風を入れ、冬はお日さまの熱をたくさん入れるつくりです。
暖房は家に求めるものでは無く、炬燵やいろりで賄いました。
壁は土壁で板壁よりは断熱性も期待できますが、その前に隙間が多く、土壁の断熱性が期待できるようなつくり方はしてきませんでした。
唯一開口部を小さくし、厚い壁の蔵は土壁の断熱性で温度変化の少ないつくりをしていました。
夏、 開口部を大きく開け、エアコンを使わず、夜は蚊帳で寝る。
冬は達磨ストーブを置いてみんなで炬燵に入る。
化石燃料はもったいないので使わない。
こんな生活ができるならば断熱材は改めて必要ないと思います。
一見自然な暮らしのようにも感じますが、外気温に近いほどの寒い室内は実際には暮らしにくい家です。
まして高齢者や幼児にとっては健康的な環境とは言えません。
またエネルギー消費の点からも断熱材を使用することでよりエネルギーロスの無い暮らしが出来ます。
住まいの断熱材は種類が豊富にあります。
多くの場合は住む人が選択するというよりも気にいったハウスメーカーや工務店がお勧めするものを使うことになるのだと思います。
断熱材は表には出てきません。壁の中ですが建物のつくり方によっては室内んも空気環境にも影響を及ぼします。
何を使うにしろ安全を確認した上で使っていただきたい。そう思うのです。
断熱材の種類
断熱材の種類は鉱物系のロックウールや無機質系のガラス繊維グラスウール、ケミカル系のポリスチレンやウレタンフォーム等多種多様な商品がありますが、今回は木の家に使いたい自然素材系の断熱材を紹介します。
自然素材系断熱材の種類
(一般的に商品として流通しているもの)
1:杉の皮を固めたり間伐材利用
(フォレストボード・ウッドファイバー)
2:新聞紙をリサイクル
(セルロースファイバー)
3:羊の毛
(ウール断熱)
4:コルク
(炭化コルク)
5:その他
(麻とか藁とか趣味の世界へ)
自然素材系の断熱材の大きな特徴は素材自体が吸放湿(調湿性能)性能を持っている事です。
それに対して化学系断熱材(発泡プラスチック系、無機繊維系、鉱物系)はそれ自体はほとんど吸放湿(調湿性能)性能はありません。
グラスウールやロックウールなど繊維質の断熱材は同じく吸湿しますが水蒸気を繊維の中に保持する能力が低く限度を超えると水滴となり結露を起こします。そのためグラスウールやロックウールの断熱材は室内から湿気が壁内に入るのを防ぐため防湿シートが施されています。
自然素材系の特徴としては木材の性質に近く、吸湿限度が高いばかりかある一定の吸湿状態になるとそれ以上吸湿しなくなる性質があります。
また、一度吸収した水蒸気も外部の気流や温度差などにより速やかに排出する性能もあるため関東近郊の室内外の温度差程度では防湿シートが無くても、正しい施工を行えば結露の危険は小さくなります。
(要結露計算)
木の家に使われる無垢の木の調湿性能も自然素材の話題ではテーマになりますが、構造躯体の木の体積より使用される断熱材の体積の方が圧当的に多いのです。
躯体は線ですが、断熱材は面ですからしかも厚みは壁厚程度あります。
こと調湿性能で言うのであれば住まいに使われる木の調湿性能など遥かにしのぐほどの体積が断熱材にはあります。
自然素材系の断熱材を入れた木の家では施工が正しければほぼ結露は起こりません。(埼玉近郊)
また、壁内の湿度も年間を通して安定していると言われています。
機械設備に頼り温度や空調をコントロールする暮らしであれば自然素材系の断熱材を使う必然性も小さくなりますが、よりパッシブに生活しようとするならば自然素材系の断熱材のメリットはあると考えています。
木造躯体との相性の良さと吸放湿(調湿性能)性能の良さを書きましたが、デメリットもあります。
第一にコスト
ウールやウッドファイバーでは同程度の断熱性能で比べたときに汎用的に使用されている高性能グラスウール16k100mmと比較して材料費で約2倍、施工費でも約2倍程度の手間がかかり工事金額のアツプに繋がります。
吹き込み工法のセルロースファイバーでも材料費で1.5倍程度、施工費でも専門職が行うと約1.5倍程度になります。
第二に性能の限界
長期優良住宅(熱損失係数2.7)の枠を超え、熱損失係数を1.0に近づけていこうとするとき自然素材系断熱に適した充填断熱の限界が現れます。
2.0を切るあたりがどうやら経験的に限界になります。
もちろん熱交換型空調設備の導入やトリプルガラスなどで性能を引き上げることはできますが、断熱材自体では充填断熱の限界が現れます。
熱損失係数を1.0に近付けていくにはウレタンボードなどの石油由来の断熱材の助けを借り、複合断熱としなければ大きく断熱性能を上げることはできません。
表に挙げた断熱材以外にもたくさんの断熱材があります。
また、同じ材質でもメーカーや仕様により性能差がありますので参考値としてください。
※中央の数字は熱の伝えやすさを表し、数値が小さいほど熱を伝えにくいということで断熱性能が高い素材と言えます。
※省エネ等級4の必要厚とは
一定の基準レベルをクリアーするのに必要な厚みを現します。
例GW10Kでは23cm必要なところをウレタンであれば16cmの厚みでクリアーできるということです。
主要材料断熱性能比較(一部参考に断熱材以外も有ります)
断熱材(名称) |
熱伝導率(w/m.k) 参考メーカー | 埼玉地域省エネ4等級屋根必要厚(mm) |
ウッドファイバー | 0.038(木の繊維参考) | 175 |
ウール100% | 0.040(ウールブレス参考) | 185 |
グラスウール10K | 0.050(旭硝子参考) | 230 |
グラスウール16K | 0.045(旭硝子参考) | 210 |
高性能GW16K | 0.038(旭硝子参考) | 175 |
セルロースファイバー | 0.040(デコス参考)吹付 | 185 |
ウレタン現場発泡 | 0.034(フォームライトSL参考) | 160 |
コンクリート | 1.5 | |
桧・杉 | 0.12 | |
アルミ | 200 |
|
参考に挙げた写真は素材は違いますが全て自然素材系断熱材です。
結露計算を行った上で全て長期優良住宅レベル4をクリアーしています。
包まれて暮らすという意味では石油系などより自然な素材の方が気持ちがいいと単純い思うのです。
住まいづくりのコラムなど定期的にお伝えしています。
ご登録お待ちしています。