夏を季節を快適に過ごしたいとするとき、住まいづくりでは「風通し」や「断熱性」を考えますが、これは暑さを受け入れた後に考えることで、暑さの基を断つという考えでは「日射遮蔽=遮熱」が有効になります。
風通しが悪くても、土蔵は夏でも涼しく感じます。
暗くて暮らしやすいかどうかはまた別の話ですが、極端に開口部が少なく、屋根も2重にするなどの工夫で日射を遮蔽し室温が上がらないようにしています。
平均的な開口部を持つ一般的な住まいの熱の出入りは約70%開口部からと言われています。窓からの熱の侵入を抑えることがより効果的であることがわかります。
では日射を抑えるにはどのような方法があり、どの程度有効なのでしょうか。
1:植栽に期待する(コストバランスが優秀)
緑のカーテンや樹木は葉が茂る季節では直接的に日射を遮る効果があり、コスト的にもとても有効な方法です。
また、掃出し窓の前などはコンクリートでは無く芝生などにすることで反射光による窓からの日射の侵入を抑えることが出来ます。
2:軒の出や庇、ルーバー、オーニング、すだれなど
軒の出を大きく取り、窓上に庇を設けることで太陽高度の高い夏の時期の日射を有効に遮ることが出来ます。
また、陽射しが低い時期の日射を遮るためには、ルーバーやオーニングなどが有効です。
軒の出や庇、ルーバーなどは建築時の工事が必要ですので新築計画の時点で考えておきましょう。
スダレはとても設置費用が安く、緑のカーテンと同じく費用対効果の優れた方法です。
3:窓の中で考える
カーテンやブラインド障子など
窓の中で防ぐことになるので日射はいったん室内に入り込みます。
窓の外で防ぐのに比べれば効果は落ちます。この差はとても大きいので、外でも防ぎ、さらに補助的に考えるべきでしょう。
4:ガラスの種類で考える
日射の反射率を高めたガラスがあります。
LOW―Eと表示されるガラスで非常に薄い金属膜がコーティングされ日射を反射する性質があります。
いい事ばかりでは無く冬も日射を反射しますので何だか日が当たっているのにポカポカしない。等ということにもなります。
窓廻りで日射を遮る工夫としてはこの程度だと思いますが、新築であればプランの段階であえて西日が当たる面の窓を小さくするとか、南側のバルコニーを跳ね出して庇代わりにするなどプランニング段階で工夫することが「パッシブな設計」の基本です。
エアコンやストーブを頼りにするのは当たり前のことですが、何でもかんでもエネルギーを使い、力技で温熱環境をねじ伏せるのではなく、ナチュラルに暮らす手法を考えていきたいです。
5:屋根の日射遮蔽
屋根に日を当てなければ最高の日射遮蔽になりますが6mを超える屋根に日陰をつくるのは大変なの事です。
屋根の日射による熱の侵入を遮ることも日射遮蔽と言えます。
屋根材による遮蔽としては日射吸収率の低い材料を使うことも一つの手段です。色で言えば黒よりの白に近い方が吸収率は低くなります。
瓦はレンガなどと同じく、熱容量が大きく暖まりにくく冷めにくい性質がありますので日が沈んでも熱を持ち、輻射熱を放出します。
金属屋根は熱容量が小さく暖まりやすいですが直ぐに冷えますので日が沈めば輻射熱の放出も少なくなります。
また金属屋根では鋼板の製造過程で遮熱塗料を施すメーカーもあり、そのような製品を使うのも有効だと思います。
さらに屋根材の下に敷く遮熱シートなどもありますので有効に使いたいところです。
ただ、しっかりとした断熱を行い、屋根面通気層を確保してあれば断熱効果が勝ってしまい、屋根材の日射吸収率や遮熱塗料、遮熱シートの効果はほぼ体感できないという結果にも注意すべきです。
屋根面の遮熱で最も有効なのが屋根面通気層の確保と言われています。実際に通気層が遮熱をするわけでは無く、加熱した屋根面の輻射熱を断熱層に伝えないという意味で有効なのです。
軒先や、壁面通気層を通り土台部分から入った空気を屋根の頂部で抜きます。
いわゆる重力換気で、温度の低いところから高いところへ抜ける空気の性質を利用したエネルギーに頼らない熱に対抗する工法です。
この場合5mmや10mmの通気層では空気は両面の摩擦で動きません。
最低でも20mm以上は必要と言われていますが、当事務所で行う場合は屋根面では45mm、壁面では25mmの空気層を確保します。
屋根面通気工法は屋根が2重にあるようなイメージです。工事に関しては多少費用が掛かりますが新築時でなければできない事、先ほども書いたようにエネルギーに頼らない熱対策であることを考え是非採用することをお勧めいたします。
まとめ
風通しや植栽、開口部の取り方や軒の伸ばし方、庇の工夫など家のつくりにおいて遮熱を考えることは暮らしやすさにもつながり、出来るだけ自然体で暮らしたい方には実践していただきたい考え方です。
一方、近年の暑すぎる夏、省エネの流れの中で断熱とは違う遮熱という考えが建築業界的にも話題に上ることが多くなりましたが「遮熱部材に頼る」類の工法については必ずしもその効果が体感できるとは限りません。
確かに省エネに暮らすための一つの選択肢ではありますが、断熱に比べれば室内環境に及ぼす影響は極わずかなのです。
なぜなら太陽光を反射させるということが目的なわけですから、有効的に効果が認められるのは主に7月から9月しかも晴れている日限定なのです。
夏でも曇りや雨では遮熱材の効果は期待できません。
つまり費用対効果を考えたときに「無いよりはいいけどその費用は?」という冷静な判断が必要です。
遮熱部材(遮熱塗料など)がその実力を発揮し、効果を体感できるとしたら、それはリフォームの時です。
「断熱に関しては今のままで、でも暑さ対策をしたい」というような場合には有効です。断熱性能が無い場合、あっても不足している場合にはその効果も体感できるのではないかと考えます。
新築であれば遮熱の効果を期待してその対策に費用を掛けるよりは屋根面や西日の当たる壁面の断熱を強化すべきなのです。
断熱を強化すればするほど遮熱性能より断熱性能が勝り、遮熱の効果は薄れます。
断熱の強化は夏限定では無く、当然冬の過ごしやすさにもつながります。
遮熱も断熱と同じく費用対効果を把握して進めましょう。
断熱が不足しているリフォームでは遮熱も有効
新築ならば断熱が先
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